アダルトなそれをBGMに
母と親父が初の2人きりで旅行に行ってる。
弟は野外活動にいってて、家には俺1人。
つまり擬似一人暮らしだ。
ワクワクする。
恥ずかしながら、この歳になって未だ1人暮らしをしたことがない。
実家の恩恵をしこたま24年間浴びて育った。
そんなおれにとって一日中家に1人というのは珍しかった。
田舎から飛び出してきた夢見る少女の気持ちを一日体験できるのだ。
今日は仕事が終わったら絶対家から出ないと決めた。
仕事が終わって、さっそくDVDを借りに行った。引きこもりにDVDは欠かせない。
DVDを選んでいると、ピンクののれんが目に入った。アダルトコーナーが俺を呼んでいた。
今日家には誰もいない…これだ!どうせなら1人でしか出来ないことをやらねば…!
俺は謎の使命感に駆られてアダルトコーナーに吸い込まれて行った。
っていうかもうこの時点で夢見る少女ではない。夢見る少女はアダルトコーナーに行かない。
夢見る少女どころかその時の俺の心は完全に休日の童貞だった。
AVを選んで精算をしようと思ったら、なかなか足が進まない。
恥ずかしい。レジに行きたくない。AVを借りたことがないから、レジでの恥じらいの抗体が出来てない。完全に盲点だった。
10分くらい借りるか迷って店をウロウロした挙句結局AVは借りなかった。自分の根性の無さを恨んだ。
帰りにコンビニに寄った。
焼酎と、せっかく1人なんだからと思って普段は買わないちょっと高級感あふれるつまみを買った。イカとチーズとスナック。
それぞれ並んでる商品で一番高いやつを買った。
家に帰ってどうしてもAVを諦めきれず、とりあえずスマホのアダルト動画をイヤホンを付けずに流した。
今日はイヤホン付ける必要がない。なぜなら家には俺1人だからだ。
先ほど買った酒とつまみを楽しみながらそれを観賞した。
しばらくして、結構酔ってきて水を飲みたくなったから冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫を探っていると、今日俺が買った酒とつまみと全く同じクオリティの物が入ったビニール袋とメモ用紙が出てきた。
メモ用紙には「風呂上がりにでも飲んでください」と書いてあった。母の字だった。
俺は誰もいない家で半裸で「母上!!」と叫んだ。